建築写真が持つ力

ヤマシロが寄稿した記事が「新建築2009年2月号」に掲載されました。「建築写真が持つ力──夢の美術館 日本名建築写真展」と題し、六本木ミッドタウンで開催された写真展のレポートをしています。

レポートの執筆のお誘いをいただいて見に行った展覧会だったのですが、期待以上に楽しめた展覧会でした。すでに展覧会は終了してしまいましたが、別の機会に展示されるようであれば、ぜひご覧下さい。

大判の銀塩写真の実力を再認識した展覧会でした。

 現代はwebやメールを通じて、手軽で低解像度の情報が瞬時に世界を駆け巡り、広まっていく。無数のイメージが大量に流通する中で、いかそれに埋もれずに強いインパクトを社会に与え、議論の流れをつくれるかという競争が繰り広げられる時代だということは間違いないだろう。
 同時に、いままで考えられなかったような高解像度なイメージ(動画も含めて)を個人が扱える時代でもある。地球の裏側であっても比較的気軽に出かけることの出来る交通技術と通信技術を手にした現在、「その場を体験する」という最も解像度の高い体験もまた限られた人々のものではなくなりつつある。
 流通のための単純なダイアグラムのような建築ではなく、多様な読み取りが可能で、重層的な時間を取り込んだ建築。低解像度の写真のなかでのフォトジェニックということではなく、高精度な鑑賞に堪えうるようなエイジングをする建築。解像度の高い思考に支えられた建築。何かを切り分けて別々に理解するのではなく、同時に感じることができる建築。今回の写真展をみながら、そんな建築を作っていこうという勇気をもらった。