フラクタル日よけ

緑化をしのぐヒートアイランド対策

 都市のヒートアイランド対策に威力を発揮しそうな、新タイプの「日よけ」が注目を集めている。京都大学大学院の酒井敏教授が考案した「フラクタル日よけ」だ。葉っぱが茂る樹木を模した構造で、木陰のような涼しさを感じられる。一見ローテクだが、その設計にはヒートアイランド研究の常識をひっくり返すような発想が入っている。

 東京都江東区にある日本科学未来館の玄関前に6月下旬、「シェルピンスキーの森」と名付けた日よけが設置された。8月末までの予定で、気温などのデータをとって、冷却効果を確かめる実験をしている。酒井教授らが企画・設計、製作は積水化学工業の関連会社、積水インテグレーテッドリサーチが担当した。

 屋根部分は樹脂製で、三角形のとんがり帽子を集めたような形。構造には「フラクタル」の一種である「シェルピンスキー四面体」を採用している。フラクタルは数学者のマンデルブローが導入した幾何学の概念。全体と部分の形が相似形をなしているもので、海岸線や樹木の枝分かれの構造など、自然界に広く存在する。

 シェルピンスキー四面体は、1つの四面体から同じ形で一回り小さい四面体を次々にくりぬいていって作った構造。酒井教授によると、この構造は自然の樹木の葉の分布の仕方に近いという。日差しは防ぐ一方で、風通しが良い。

 なぜ葉に似せた構造を作る必要があるのか。酒井教授は「葉の一つひとつが十分に小さいから」と説明する。

 太陽に照らされると、地上の大きな物体は熱くなりやすく、小さな物体は熱くなりにくい。たとえば炎天下で自動車の車体は高温になる。だが、同じ場所に置いたミニカーは金属製でもそれほど熱くならない。小さい物体は大気に熱を逃がしやすいためだ。同様に植物の葉のように小さな物体は熱くなりにくい。(中略)

 フラクタル日よけは、樹木に近い遮熱効果を持つうえ、メンテナンスも容易で、なにより水を必要としない。「屋上緑化の代わりや、壁面への設置で効果が期待できる」(酒井教授)という。緑化にこだわらない新しいヒートアイランド対策として、性能の検証などが期待される。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090722.html

ものの「小ささ」に着目したデザインというのは面白いなと思いました。
メモとして