「大連で建築をつくってみた」

昨晩はHEAD研究会の部品建材TFと国際化TFの合同ミニシンポジウムでお話ししてきました。

「大連で建築をつくってみた」と題して、大連で地方政府をクライアントとして標準的な公共施設(小学校二校など)を設計した経験の中からお話ししました。

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プレゼンテーションに使ったpreziを公開します。

■部品建材はどこで調達するのか?

大連で竣工したプロジェクトの紹介の後には、建材市場と阿里巴巴という二つの部品建材の調達方法についてお話ししました。

建材市場に相当するものは日本にはないような気がしますが、ありとあらゆる種類の建材のお店が軒を並べる市場です。アパートの内装をしたい個人客から、今回の小学校のようなプロジェクトまで、この市場品物を物色して購入するのは基本といっていいかと思います。

ただ、大連で見る限り、建材市場における日本メーカーの存在感は薄く、TOTOLIXILといった衛生機器メーカー、日本ペイントPanasonicなどの照明器具、ダイキン空調機機くらいでしょうか。

阿里巴巴(アリババ)などのネット販売も中国では日本より積極的に取引されているようです。検索などで商品にあたりをつけ、個別の業者とチャットなどで詳細や条件などを比較検討しながら購入していきます。

大連の小学校の場合では、外装タイルのようなものは建材市場で現物を確認して購入するけど、部品的なものは阿里巴巴などのネット販売で購入するものも多いようです。

また、最近では建材市場で品物の現物を確認した上で、購入はネットで価格や条件など比較しながら購入するというショールーミングが一般的になりつつあるようです。


■部品建材をだれが選ぶのか?

もうひとつ日本と大連の公共施設の設計を通じて感じた大きな違いは、部品建材の選択の主体がクライアントとにあることです。日本でも最終的にはクライアントの意向は無視できませんが、設計者や施工者が勧める材料に承認を与えるという流れでしょうか。

中国の場合は、民間の工事であっても設計者は図面中に具体的なメーカー名や製品名は指定できない規範があるそうです。例えば小学校であれば教育局の担当者の中にそういった経験のある担当者がいて、最終的にはその担当者の意見が強くなります。

施主の担当者も素人というよりはゼネコンの購買部のような知識や経験を持ち合わせている場合も多いようです。

一方で設計者のほうも、日本に比べると部品建材に対する知識もこだわりもないようです。

(これは、先に断ったようにある条件下での話です。スターアーキテクトのプロジェクトや、意匠性を最優先にするインテリアなどでは全く状況が違うと思います。)

■部品建材を誰に向かってアピールするのか?

このような状況から考えると、日本では比較的設計者や施工者といった限られた専門家に向けて行っている部品建材のアピール(専門誌への広告や訪問営業など)をエンドユーザーである大衆に向けてやる必要が大きくなるということが分かります。

事実、中国では日本ではそれほど一般的でないもの(例えばレンジフードやフローリングなど)も、テレビコマーシャルやバスの広告などを積極的に出しているいうに見えます。

そしてそれらの部品建材が建材市場の店頭にちゃんと並んでいるように、無数の販売チャンネルを構築しなければなりません。

そのような条件下で、日本のメーカーが本当にそういった営業のチャンネルを築く気があるかは疑問です。最大手はすでに着手しているでしょうが、日本の中小のメーカーにそれだけの体力や情熱はあるでしょうか。

ひとつ可能性があるとすれば、先日HEADベストセレクション賞でも表彰された西粟倉村の取り組みのような、製品の背景にある価値観やストーリーまでを含めてアピールし、中国中に点在する共感してくれるクライアントと直に繋がって行くようなスタイルではないかと思います。

巡回型展示のように、実際に品物に触れることが出来るような機会をイベントとして演出することも組み合わせられるでしょう。

そういった観点で考えて行くと、中国でものを売ることと、日本の地域から都市や他地域にものを売る戦略というのは、実は同じなのではないかと思います。

■中国は出て行く価値のある市場なのか?

日本人と中国人の好みのギャップというものも、今のような60年代、70年代生まれが中核をなす時代から、日本人的な感性とも近い80年代生まれ(80后)、90年代生まれ(90后、今の大学生たち)が消費の中核をなしはじめる時代に移行するこれからは、ずっと近くなるはずです。これからは一番美味しい収穫の時期なのではないかと思います。

おそらくは、障害となるのは外的な要因というより、国内企業の規模や体質といった内的なものになりそうです。

その上で、中国などに進出するることに興味があるメーカーがあれば、一緒に仕事をして見たいと思います。