これはだれのための要請なのか

耐震偽装藤沢市が住民に来月中旬までの退去要請

 耐震強度偽装問題で、神奈川県藤沢市は27日、同市内のマンション「グランドステージ藤沢」(10階建て)の住民に対する説明会を開き、12月中旬までに自主退去するよう要請した。

 期限までに退去しない場合、市は、建築基準法に基づく使用禁止命令など法的措置を取る予定。住民側からは特に異論はないという。近く正式に文書で伝える。

 説明会には、入居している全15戸と入居予定だった1戸の住民が出席。うち7戸は社宅や親類宅などへの転居を決め、3戸は市営住宅への転居を希望。残る6戸は未定という。
(2005年11月27日21時12分 読売新聞)


例の構造偽装問題。行政が構造偽装が判明したマンションからの退去を要請しているということらしい。「危険な建物から身を守るために、退去してほしい」。住民のことを考えた、全く当然の要請のように思えるかもしれないが、そうだろうか。


今回の問題は、基準を満たした設計、施工をしていなかった、その偽装を見抜けなかったことが大きな問題であるけれど、「危険な建物」ということであれば、膨大な量の既存不適格のマンションだったり、脆弱な構造しか持たない既存の木造住宅などはどうなるんだろうか。


「危険だから退去を勧告する」ということであれば、現在の構造基準をみたしていないこの建物たちのあり方についても言及すべきだろう。今回の退去要請には、「自分たちが法律通りに安全を確認出来なかった建物で、死者やけが人がでては困る」という自治体の対面を取り繕う姿勢しか感じられない。